皆さんこんにちは!
株式会社東洋アーク、更新担当の中西です。
目次
溶接の道具と技術
~職人技を支える道具たちと、見えない技術の世界~
今回は、溶接現場で実際に使われている**「道具」や「技術」**について詳しく解説していきます。
鉄骨・配管・機械部品などを接合する「溶接」は、建設・製造・インフラ整備といったあらゆる分野で活躍するものづくりの根幹です。
しかしその作業は、単に“金属を熱でくっつける”だけではありません。
使う道具の種類や状態、作業者のスキルや経験、そして素材に対する深い理解が、品質に直結します。
今回は、溶接を支える基本道具と技術の基礎を、初心者の方にも分かりやすくご紹介します!
1. 溶接に必要な基本の道具たち
✅ 溶接機(アーク・TIG・MIG など)
溶接作業の“心臓部”とも言えるのがこの機械。
電気やガスのエネルギーを熱に変換し、金属同士を一体化させます。現場ごとに適した種類を使い分けます。
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アーク溶接機
→ 一般的に最も多く使用されているタイプ。電極と金属の間でアーク(電気火花)を発生させて溶接します。コストが低く、鉄骨工事や配管などに最適。 -
TIG(ティグ)溶接機
→ 精密な作業が求められる現場で活躍。ステンレスやアルミニウムの溶接に適しており、仕上がりも美しく、装飾性が求められる製品にも対応可能。 -
⚙️MIG/MAG溶接機
→ 半自動溶接機で、ワイヤーが自動供給されるため作業効率が非常に高く、工場での量産ラインや薄板溶接に最適。MAGは主に鉄鋼、MIGはアルミなどに使われます。
✅ 溶接棒・ワイヤー(溶加材)
溶接によって接合される部位に“材料”として加える棒やワイヤーです。これが金属と金属をつなぐ橋渡し役となります。
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種類はステンレス、軟鋼、アルミ、ニッケル系など多様。
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材質や形状、太さの選定ミスは、ひび割れや強度不足の原因にもなります。
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TIGでは手で棒を供給、MIGではロールで自動供給されます。
ポイント:
金属の種類、板厚、使用環境(高温・屋外・水回りなど)に応じて、適切な材料を選ぶことが重要です。
✅ 保護具(安全装備)
溶接作業は高温・強光・有害ガス・金属の飛散など、非常に危険な作業です。安全性を確保するための防護具は不可欠です。
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溶接面(ヘルメット・遮光マスク)
紫外線や赤外線から目と顔を守ります。最近は自動遮光式の面も普及し、作業性が向上しています。 -
耐熱手袋・革手袋
高温になる金属やスパッタ(火花)に触れることもあるため、火傷を防ぐための重要なアイテム。 -
耐火エプロン・腕カバー・安全靴
金属がはねても衣類が燃えたり皮膚を傷めたりしないよう、耐火性の素材を使った装備を着用します。 -
換気設備・防塵マスク
溶接時に発生するヒューム(煙)や金属粉を吸い込むと健康被害の原因になります。作業場所の換気・吸気システムの設置も非常に重要です。
️2. 溶接に求められる技術とスキル
溶接作業には、道具だけでなく熟練した技術者の“手の感覚”と経験が大きく影響します。以下のような技術が求められます:
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アークの安定性を保つ手さばき
→ 電極と母材の距離や角度を一定に保つことで、均一な溶接ビード(溶接の線)が形成されます。 -
熱による歪みの管理
→ 金属は熱で伸縮します。加熱の順番や位置取りを工夫しながら歪みを最小限に抑える技術が必要です。 -
溶け込み深さの調整
→ 金属をしっかり融合させるため、溶け込み(溶接の深さ)を適切にコントロールする技術も求められます。 -
外観の美しさ・品質管理
→ 船や建築のような構造物では強度重視、精密機械やインテリアでは見た目の美しさや滑らかさも評価されます。
進化する溶接の世界
最近では、デジタル制御や自動化技術の進化により、溶接技術も飛躍的に向上しています。
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ロボット溶接:工場や車両製造で活用されており、高速・高精度な接合が可能。
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センサー連動型TIG溶接:電流・温度をリアルタイムで管理し、不良品の発生を最小限に。
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AR/VRによる溶接訓練:仮想空間でのシミュレーションにより、安全にスキルアップが可能に。
まとめ:道具と技術の両輪で支える“つなぐ力”
溶接は、「ただ火を使って金属をつなぐ」作業ではありません。
専用の道具、安全装備、的確な技術、そして職人の経験が一体となって初めて高品質な溶接が成立します。
建物の強度、乗り物の安全性、製品の精密性――
すべてはこうした“見えない努力”によって成り立っているのです。
次回もお楽しみに!