皆さんこんにちは!
株式会社東洋アーク、更新担当の中西です。
~“強く・きれい・早い”~
「ビードが乗らない」「ヒケ・ブローホールが出る」「組立後に“曲がる”」——溶接の悩みは尽きません。
ここでは設計→開先→溶接条件→検査→歪み管理まで、現場ですぐ使える型をまとめました。
目次
1|まず“使途と材料”でプロセスを選ぶ
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軟鋼(SS材):
MIG/半自動(GMAW)が主力。屋外・下向以外はFCAWも強い。E7018/ER70S-6が定番。 -
ステンレス(SUS304/316):
**TIG(GTAW)**で清浄・薄板が得意。低入熱で焼け・歪みを抑える。 -
アルミ(5052/6061):
AC-TIG/Pulse MIG。酸化膜除去(ワイヤブラシ/ACバランス)と清浄な母材が命。 -
厚板・大入熱:
**SAW(サブマージアーク)**や多層盛り。予熱・パス間温度の管理が品質を左右。
屋内/屋外・板厚・姿勢・必要強度を軸に選定。**WPS(溶接施工要領書)**で前提を共有するのが第一歩。
2|“開先・合わせ”で8割決まる ✂️
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開先角度・ルートギャップを図面で固定(例:V45°/ルート1.5mm等)。
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面取り&脱脂:ミルスケール・油・水分は欠陥の原因。
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仮付け:短・点数多めで歪みを抑制。対称配置が基本。
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ルートフェイス:薄すぎると焼け落ち、厚すぎると未溶け込みになりやすい。
3|条件出しの黄金ルール⚙️
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電圧・電流・送給はアーク長=一定を狙う。
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**Stick-out(伸び)**は10〜15mm目安、角度は押し/引きでビード形状を使い分け。
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パルスは薄板・隅肉の入熱低減に有効。
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ガス:軟鋼はCO₂/混合ガス、SUS/AlはAr系。流量は風・ノズル径に合わせる。
ミニ試験(50×200mmの同条件3枚)でビード高さ・脚長・裏波を確認→WPSへ反映。
4|代表的な欠陥→原因→対策
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ブローホール(気孔):表面汚れ/湿気/ガス被覆不足 → 脱脂・乾燥・シールド強化
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未溶け込み:低電流/速度過多/開先不良 → 入熱↑ or 速度↓、開先再調整
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アンダーカット:電圧高すぎ/角度不良 → 電圧↓、トーチ角度見直し
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割れ:高硬化・急冷・拘束 → 予熱・後熱・拘束緩和・低水素材
5|歪みを“設計で減らす”7手 ️
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対称溶接(左右交互)
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スキップ/バックステップ
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短ビード分割(連続長を短く)
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治具・拘束(でも過拘束に注意)
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入熱管理(パス間温度・休止)
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反り代の設計(先曲げ/先反り)
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ピーニング/矯正は最後の手段
6|検査・品質記録で“再現性”を担保
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外観(VT):脚長・余盛・アンダーカット・欠陥有無。
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PT/MT:表面・近表面の割れ検出。
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UT/RT:内部欠陥の確認(厚板・重要部)。
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記録:ヒート番号・ロット・WPS/パラメータ・検査結果を写真台帳で一元管理。
7|安全は“火花の外側”まで ️
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PPE:遮光面、難燃手袋・エプロン、皮ブーツ。
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換気・集塵:ヒューム吸引・局排・屋外作業時の風向に配慮。
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ボンベ:立てて固定、火気から距離。
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火花飛散:養生シート/火花受け、火の元巡回(Fire Watch)。
8|薄板TIG“鏡面ビード”3ステップ
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清浄(両面脱脂+酸化皮膜除去)
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最小入熱(電流低め・パルス活用)
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トーチ角10–15°+短アーク、フィラーは一定リズムで送る
9|事例ミニ:SS400 9t 隅肉溶接の歪み低減
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Before:連続長300mm一気盛り→**角度ズレ0.8°**発生
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After:150mm×2スキップ+バックステップ+クランプ2点
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結果:ズレ0.2°、仕上げ削り**▲40%**、タクトも短縮✨
まとめ ✅
溶接は**設計(WPS)×前処理(開先・清浄)×条件(入熱)×検査(記録)**の総合格闘技。
“強く・きれい・早い”は両立できます。現場に合う型を作って、繰り返し再現していきましょう。✨