東洋アークのよもやま話~12~

東洋アークのよもやま話~12~

皆さんこんにちは!
株式会社東洋アーク、更新担当の中西です。

 

SMAW(手溶接)は電源・ホルダ・アース・棒の最小装備でどこでも戦える一方、結果が技能と段取りに直結します。屋外・高所・補修・狭所…“最後の砦”として使いこなすための理屈×型を体系化します。🔥

 

1|装備・配線・極性
• 電源:定電流特性(CC)。アーク長の変動に対して電流を一定に保ち、ビードを安定させる。
• ケーブル:太さ・長さで電圧降下が変わる。接合部の発熱・焼損を予防。
• 極性:一般に直極(DCEN)で入熱は母材側に多く、逆極(DCEP)は棒先が加熱され溶滴移行が変化。棒種の指示に従う。
• 延長ケーブル:リール残り巻きは誘導加熱で危険。全て伸ばすか巻径を大きく。⚡

 

2|溶接棒の体系と選び方(例:E4916/E4918 等)
• セルロース系:仮付・立向上進・パイプルートに強い。アーク力強、風に比較的強い。
• イルミナイト系:一般構造用。スラグ剥離良。
• 低水素系(E7018相当):水素割れ対策、靭性確保。乾燥管理が生命線。
• 裸棒(TIG用とは別):特殊用途。
選定軸=母材強度・必要靭性・姿勢・環境(屋外/屋内)・検査要求。🧪

 

3|棒の保管・乾燥・取り扱い
• 乾燥温度の目安:低水素系は300〜350℃×1〜2h(メーカー指示優先)。再乾燥回数は管理簿で制限。
• 現場携行:保温筒で100〜150℃、露点を意識し結露防止。
• 開封ルール:必要量のみ開封、ロット混在禁止。🧾

 

4|条件設定の基礎
• 棒径別電流の目安(軟鋼):φ2.6→70–100A、φ3.2→90–130A、φ4.0→120–180A、φ5.0→160–240A。
• アーク長:芯径=アーク長を基準に短め安定。長過ぎはスパッタ増・融合不良。
• 角度:進行方向に10〜15°傾ける。立向上進はZ字・三角の置き運棒で“置きながら登る”。📐

 

5|運棒の型(ビードメイク)
• ストレート:薄板・突合せルート。
• ウィービング(三角/三本線/円弧):隅肉や広幅で。端部で一瞬止めて脚を立てる。
• 戻し気味終端:クレータ割れ防止、スラグ巻込みを避ける。🎶

 

6|姿勢別のコツ(下/横/立上進/上向)
• 下向:やや速め、余盛の山を低く。
• 横向:下脚に金属を“溜めすぎない”。アンダーカット抑制に電圧感覚を低めに。
• 立向上進:置く→送る→置くのリズム。プールを常に段差の手前に保持。
• 上向:短アーク+小織り、熱を持たせすぎない。🧗

 

7|よくある欠陥と是正早見
• スラグ巻込み:織り幅広すぎ/端部滞留不足→端で止める、層間清掃、電流最適化。
• 気孔:湿気・油・風→乾燥・脱脂・遮風、スタート板有効。
• 融合不良:アーク長長すぎ/電流不足→短アーク・電流↑、開先確認。
• アンダーカット:速度速すぎ/電圧感覚高→速度↓・角度調整。🔍

 

8|“段取りで勝つ”実践A3
1) 施工前:開先ゲージ→脱脂→目荒し。
2) 棒:ロット・乾燥・本数計画。
3) 治具:保持・遮風・姿勢の再現。
4) 検査:VT→必要に応じPT/UT。
5) 記録:溶接番号・条件、不良ゼロでも写真を撮る。📸

 

9|練習メニュー(2週間)
• Day1–3:直線ビード、アーク長安定。エッチングで溶け込み確認。
• Day4–7:隅肉a6〜8で三角ウィーブ。断面で脚長と喉厚。
• Week2:立向上進・上向。クレータ処理を重点。NG→是正→再評価のサイクル。📝

 

10|ケース:屋外梁の立向上進a8
課題:風で気孔、脚立不安定。
対策:遮風スクリーン・脚立固定・短アーク・置き運棒・層間清掃徹底。火気監視員配置。📻

 

11|チェックリスト
☐ 棒の乾燥・保温
☐ アースの確実なクランプ
☐ アーク長一定(短め)
☐ 端部での“止め”
☐ 層間ブラシ
☐ 終端の戻しとクレーター処理 ✅

 

12|まとめ
SMAWは“型×清浄×短アーク”。写真標準と断面観察を日常化すれば、屋外でも一次合格率は安定します。次回は半自動(GMAW)を速度と品質の両面から最適化します。⚡